むりしない農家(仮)のブログ

無理をしないことに決めた農家(仮)のブログです。

剪定ムズい

こんにちは!むりしない農家(仮)です。

 

前回出し渋った剪定の話を今日はします。

剪定とは、りんご栽培において最も難しく、かつ最も重要とされている作業です。

何が難しいのか、それを言語化することすら難しいんですが、強いて言えば「正解はないのに間違いはある」ところかなと思います。

 

剪定の最大の目的は、いいりんごをたくさん収穫できるようにすることです。その目的に向かって、多くの果樹農家はうんうん言いながら毎年枝を切ってるんですね。

まず最初の難関は、「いいりんご」というのが作る人もしくは出荷先によってかなり違うという点です。

色づきを重視するのか、味が最優先なのか、サイズの揃いが命なのか。目指す理想のりんごが違うなら、とるべき方法も変わってきます。

 

そして、「いいりんご」と「たくさん収穫」は基本的にトレードオフの関係にあります。

樹が持っている栄養やパワーはもちろん、作業にかけられる手間や時間などはすべて限りがあるものです。

たくさん収穫したいからといって、枝をぎゅうぎゅうにつけて咲いた花には全部実をならせる、なんてことをすればいいりんごを全く収穫できないなんて本末転倒も起こりえます。

 

さらに厳しいのが、果樹には1年で1回転しか経験できないという大きな枷があります。

全くの初心者が1本の枝を切って、それが樹にどんな影響を及ぼしたか知ることができるのは1年後になるということです。

そのため、とにかく本数こなして経験から覚えろ!!みたいなスタイルとは本当は相性が悪いと思うんです。切っちゃったものは戻せなくて、しかもずっと残り続けるというおまけもついてきますし。

 

また、剪定の難しさには階層がある気がしています。名人と呼ばれる剪定のプロが「剪定は難しい」と言ってるのは、方針を決める部分つまり意思決定が難しいということだと思います。

RPGの魔法使いが「この戦闘シーンではどの呪文を使おうかな」と悩んだり、数学者が「この定理の証明にはどの証明方法が適切かな」と迷ったりするみたいなレベルです。

でも剪定初心者がぶつかっている「剪定難しい」は、

「呪文ってどうやって発音するの…?」

「方程式ってどうやったら解けるんだっけ…?」

というそもそも道具の使い方レベルのところです。前述の通り葉物野菜などに比べて経験値を積みにくいので、ここに数年留まらなきゃいけない人がほとんどじゃないかと思います。

 

スポーツなんかでもよく言われる、名選手が名コーチになるとは限らないみたいな理論で、剪定名人が教え方もうまいとは限りません。というか、名人に教え方まで上手くあれというのはかえって全体としては損をする可能性だってあります。

栽培のことだけをずっと考えてきて、何十年も剪定をし続けている人にしか見えないものは確実にあるはずです。それを奪ってまで初心者に教えてくれというのはそれこそ本末転倒です。

だからもう、名コーチを育てるための教育というものを新たに始めたらいいと思うんですよ。

日本の農業界には名選手は十分すぎるほどいるはずなので、そういう人にどうやったらなれるのかを分析して後世に伝える存在が現れたら無敵だろと思ってます。

 

どんどん話が脱線した気がします。総じて剪定ムズいねってだけなんですけど。早く名人と同じ眼鏡で樹を見ることができるようになりたい。それでは!